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 何年か前、新潟市内の図書館を訪れました。数多くの本が書店のように手に取りやすいように配置され、本が好きな人なら毎日でも訪れたいような図書館でした。ふと、小林百貨店の事が気になりました。古町に百貨店文化をもたらした百貨店の一つであるはずなのに、資料が殆どありませんでした。

 小林百貨店の創業者 小林與八郎は母に連れられて行った呉服店で美しい呉服に魅せられて、自分も将来呉服店を開業することを志します。そのために幼くして呉服店に丁稚に入り、雪深い地域にも自ら赴いて背負い商も行いました。

 1907年(明治40年)に小林呉服店を創業。しかし翌年、江戸時代から呉服店の四厄の一つといわれている大火であっけなく店も商品も全廃してしまいます。ただ、ここで諦めることはなく商売を続け、1931年(昭和6年)に新潟ビルデングができた時に2フロアを借り、店の規模を拡大していきます。

 1937年(昭和12年)、満を持して柾谷小路に賑々しく小林百貨店を開業させました。屋上遊園地、食堂、お買物など、常にお客様目線を大事にしておりました。昔の百貨店は親子で楽しむだけの場所ではありませんでした。今では昇降機は珍しくありませんが、エスカレーターを導入した時には、社会科や修学旅行の見学も行っておりました。デートで映画も楽しめました。百貨店とはおしゃれをしてお出かけする、みんなの憧れの場所だったのです。

 1955年(昭和30年)の大火で、またも小林百貨店は罹災しました。大火の直後、與八郎は即座に私財を投げうち京都の伏見神社まで赴き、小林百貨店だけではなく、罹災したまち、そしてまちの人々の復興を祈願して戻ってきたのです。「神にもすがる思い」とはこのことでしょう。その時の証文は小林百貨店の屋上にあった神社の祠に祀られました。創業時の思いを忘れることはなかったと思います。おかげさまで小林百貨店は従業員の方々の再建へのご尽力、足を運んでくださったまちの人々に支えられたからこそ再建することができました。その後、古町界隈に百貨店などが建ち並び、華やかにまちが賑わった時代がありました。

 しかし、スーパーなどができ、上越新幹線が開通。かつての賑わいも中心街から駅周辺に移っていきました。1980年、小林百貨店は往時を偲びながら幕を閉じました。

 平成・令和になり各地で百貨店が姿を消していく時代となってしまいました。残念なことではありますが、感じたことは違いました。楽しかった思い出や記憶はいつまでも残っているものです。小林百貨店についても、皆さんの心の中やお手元に思い出があることを知りました。写真はもとより、包装紙やマッチ箱などなど。見れば昔のレトロな色合いやデザイン。素敵なものばかりでした。令和の時代まで、お持ちでいらっしゃることに本当に嬉しく頭が下がりました。

 この素敵な思い出を資料として残しておきたい、と思っております。思い出話や写真など、小林百貨店のご記憶をこの一冊の中におさめるご協力をいただけますと幸いです。

 色々な思い出をお寄せいただけますことを、心よりお待ち申し上げております。

2021年1月31日 

小林百貨店 資料制作担当者


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